四国や九州はお蕎麦のイメージがあまりないかもしれない。しかし、それぞれ地域に根差したお蕎麦がある。北海道や長野のような広大なお蕎麦の産地というわけではないが、地域ごとにそれぞれおそばが栽培されている。
1.四国地方の郷土蕎麦
四国の麺類と言えば、やはりうどん。うどん県なる香川県を要する四国では、お蕎麦屋は肩身が狭いよう。といっても、郷土蕎麦がないわけではない。
徳島県の祖谷(イヤ)地方には、在来のソバがあった。昼夜の寒暖差が激しい祖谷で育てたおそばは良質で、『祖谷そば』として知られる。つなぎを使わないために、太く短いソバ麺が特徴。一瞬、細めのうどんかと見まがうほど太い。ただ最近は、江戸蕎麦を好む人も多いため、お店によっては二八の細長いお蕎麦を出すこともあるよう。本場の祖谷そばを食べたいのであれば、事前にチェックするのがおすすめ。
2.九州地方の郷土蕎麦
長崎県は対馬に伝わる『対州(タイシュウ)蕎麦』。実は現在日本に伝わるおそばの故郷は、対馬。その歴史は弥生時代にまでさかのぼり、稲作や鉄器などの文化と一緒に、お蕎麦も持ち込んだと考えられている。原種に近いため、お蕎麦の風味が強く、香りも濃厚。これを十割そばでいただく。日本蕎麦のルーツのルーツ。ソバ好きなら、一度は食べておきたい。
鹿児島県の特産品、自然薯をつなぎにして打ったコシの強い『薩摩蕎麦』。挽きぐるみのため見た目は黒い。枕崎や山川の鰹節を使った出汁、さつま揚げを乗せるのが特徴。
3.番外編『沖縄そば』
『そば』と言われるものの、ソバ粉は使われていない。中華麺と同じく小麦を使って作られ、食感はうどんに近い。そのほか『八重山そば』や『宮古そば』といった、沖縄の地域名が入ったそばは存在するが、いずれもソバ粉を用いたものではない。沖縄ではこれらのそばと、ソバ粉を用いた蕎麦とを区別するために、お蕎麦の方を『日本そば』『黒いおそば』などと言う。
まとめ
うどんの四国、とんこつラーメンの九州では、お蕎麦には多少分が悪いか。ただ、対馬の『対州蕎麦』という日本蕎麦のルーツがあることは非常に興味深い。