【栄養士解説】ルチンは水に溶けない!蕎麦湯の栄養にまつわる3つのウソ・ホント
お蕎麦屋さんで最後に急須や湯飲みで出される蕎麦湯。蕎麦湯は、白く濁っているお湯のようなものです。蕎麦湯は、1751年から飲まれていると言われています。
非常に歴史のある蕎麦湯ですが、蕎麦湯には蕎麦の栄養がたくさん含まれていると聞いたことはありませんか?中でも、蕎麦に含まれるポリフェノールのルチンが溶けている、という情報がネットニュースなどでよく取り上げられています。
しかし、ルチンは水に溶ける性質が無いので蕎麦湯に含まれているとは考えにくいのです。
本記事では、このような蕎麦湯の栄養にまつわるウソ・ホントについて管理栄養士の筆者がお話しします。
蕎麦湯のウソ!実は、ルチンは水に溶けません
蕎麦に含まれているルチンには、抗酸化作用をもっている、血液をサラサラにしてくれる、ビタミンCの吸収を促進してくれる、など体に嬉しい効果を期待できます。そして、ルチンは水に溶けるため蕎麦湯を飲むと健康になるという人もいます。しかし、ルチンが蕎麦湯に溶けるというのはウソです。ルチンは水に溶けないのです。
ルチンには、天然ルチンと人工ルチンがあり、蕎麦に含まれているのは勿論天然のルチンです。天然のルチンは水に溶けないのですが、人工のルチンは水に溶けます。このことから、ルチンは水に溶けるというデマが広がったのではないでしょうか。
人工のルチンは、主に食品添加物として使用されています。人工のルチンは製造することが容易ではなく、αグルコシルルチンという水に溶ける製造については、特許をとっている位です。
つまり、蕎麦に含まれるルチンは本来水に溶けない物質で、「蕎麦湯にはルチンがたくさん含まれている」という話は間違いなのです。
ルチンはビタミンPだから水溶性じゃないの?
ビタミンには、水にとける水溶性と水に溶けない脂溶性(不溶性)の2種類があります。ビタミンBをはじめとしたビタミンのほとんどは水溶性で、脂溶性ビタミンはビタミンD・A・K・Eの4つです。
ルチンはまたの名を『ビタミンP』と呼ばれています。ビタミンPは脂溶性ビタミンに入らないので、水に溶けるのではないか、と疑問に思った方もいるのではないでしょうか。しかし、現在はビタミンPには欠乏症がないということから、正式なビタミンに分類されていません。よって脂溶性ビタミンに分類されていないから水溶性という分類方法も成立しないということです。
この説については、少し栄養学に詳しい人ほど勘違いしやすい説だと考えられますね。また、今後も健康情報のウソ・ホントを見抜くために、脂溶性ビタミンの4つは覚えておくと良いでしょう。脂溶性ビタミンは4つだけ(DAKE)と覚えておくと覚えやすいですよ。
蕎麦湯のホント!蕎麦湯には栄養が溶けだしている
しかし、蕎麦湯を飲むことは決して無意味ではありません。そばには水溶性ビタミンが含まれているので、これらは蕎麦を茹でた時にゆで汁に出てしまっていると考えられます。
ビタミンB1は疲労回復や神経系を正常に保つ効果、ビタミンB2は正常な代謝の維持によるダイエット効果や成長促進および皮膚や粘膜を正常に保つ効果があります。蕎麦湯にはビタミンB1やB2が含まれているので、蕎麦湯を飲んで栄養補給をしてあげましょう。
蕎麦湯のウソ!蕎麦湯はカロリーや塩分が高いの?
蕎麦湯は厚生労働省が発表している食品成分表にその項目がありません。よって、蕎麦湯の栄養を正確に出しているデータは日本国内ではあまりないと考えられます。
では、蕎麦湯の栄養について少し考えてみましょう。
蕎麦は一般的に1束を茹でると250g程度となります。そのカロリーは約300kcalです。仮に蕎麦湯の中に5%の蕎麦が溶け出すとすれば、約15kcalが溶け出している計算になります。しかも、これは鍋全体に溶けだしている値なので、湯飲み1杯に換算することもっと低い値となりますね。また、塩分についても蕎麦250gあたりの塩分は0.25g程度ですから、蕎麦湯を飲んでも数値は高くなりません。
ただし、蕎麦湯にまでこだわるお蕎麦屋さんでは、蕎麦粉をお湯に溶かして蕎麦湯を作っているお店もあります。この場合、湯飲み1杯あたり蕎麦粉をスプーン山盛り1杯程度、約15gを溶かしていると仮定すれば、カロリーは約50キロカロリー、塩分約0.3g程度が含まれていると考えられます。このような蕎麦湯は決して低カロリーで塩分が低いとはいえませんね。しかし、蕎麦粉そのものを溶かした蕎麦湯には蕎麦の栄養の中で水に溶けないものも湯飲みの中に入っているので、蕎麦の栄養をしっかりとることができます。
また、蕎麦湯を飲むときは、麺つゆを割って飲む飲み方はできるだけ控えましょう。麺つゆを少量入れると美味しくなりますが、塩分が非常に高くなってしまいますよ。
正しい知識を身に付けて蕎麦湯の栄養をしっかり摂ろう
今回は、蕎麦湯についてのウソ・ホントを3つ解説しました。みなさんが知っている知識はありましたか?
個人のブログでも簡単に健康情報を発信できるようになった昨今、別の記事では事実のように紹介されていたのに、実は事実ではなかった、ということによく出会うのではないでしょうか。
今回のウソ・ホントについては管理栄養士である筆者が事実に基づいて執筆しております。ぜひ、みなさんも明日から正しい知識を持って蕎麦湯を楽しんでくださいね。
(参考)
http://www.h5.dion.ne.jp/~kisin-an/tisin/sobayu.html
https://www.neotechnology.co.jp/patent_front/food/9-3/%E7%89%B9%E8%A8%B1-5779796.pdf
http://www.wakasanohimitsu.jp/seibun/rutin/