お化け蕎麦に、もののけ蕎麦。
なんともふざけた名前であるが、お化け蕎麦ももののけ蕎麦も、実在するお蕎麦。
お化け蕎麦とは、油揚げと天かすが入っているお蕎麦をいう。油揚げといえば『きつね』、天かすといえば『たぬき』。そう、キツネとタヌキで「化かし合い」。ということで、キツネとタヌキ両方が入ったお蕎麦が『お化け蕎麦』。
インパクトあるネーミングとは裏腹に、現実的なおそばでもある。見た目も茶色っぽく、『お化け蕎麦』という名前に惹かれて、ワクワクしながら注文したお客は、大抵が腰抜けするという。
ところで、ごく少数ではあるが、夏場には冷たいお化けそば、『冷やしオバケ』なるものを提供するそば屋があるという。夏バテで弱った胃腸でも、サッパリといただけることから、一部のソバ通の間で人気メニューとなっている。
一方、もののけ蕎麦とは、きつね蕎麦やたぬき蕎麦のこと。もののけの名が付いたから、もののけ蕎麦であるが、広義にはお化け蕎麦も入るかもしれない。では、もののけ蕎麦はどういうところで使うかと言うと。
東京は老舗蕎麦店『室町砂場』。『室町砂場』では、きつね蕎麦やたぬき蕎麦のことを、『もののけ蕎麦』と呼ぶ。そして、もののけ蕎麦を提供していない。お店いわく「お客様に化かすものをお出しするのは失礼」とのこと。なるほど、そういう考えもあるのか。
まったく、ソバ好きが考えることは、どちらに転んでも”粋”なこと。