農作物としてのお蕎麦は、『在来種』と『改良種』に分けられる。在来種は、その土地に長い時間をかけて根付いた品種。一般的に風味や香りが強く、お蕎麦らしさを味わうことができる。ただ、ソバの実が小さいために収穫量が少ない。昔は収穫量を増やすために、交雑や品種改良がおこなわれてきた。
しかし近年、在来種の良さが見直され、多品種を排除して在来種を残そうとする動きが出てきている。そして郷土蕎麦として、地域おこしに利用されている。例えば、在来種のソバを70%以上使ったお蕎麦に対しては郷土蕎麦としての認定を行い、認定証やのぼりの配布、各種パンフレットへの掲載を許可するなどして、行政や団体をあげて在来種を守っている地域もある。
一方、改良種はその名の通り、在来種を改良したお蕎麦。栽培を行いやすくしたり、収穫量を増やすといった効果があるため、昔から行われてきた。今、日本で収穫されるソバの多くは改良種と言われている。ただ先述したように、近年は在来種を見直す動きも広まっている。
現在栽培されている、主な在来種と改良種は次のようになっている。
1. 在来種
岩手在来:春撒きと夏撒きができる岩手早生、岩手早生よりやや遅い岩手中生(ナカテ)。
最上在来:山形県の最上早生。
栃木在来:葛生と益子にそれぞれ在来。
福島在来:郷土蕎麦も多い地域で、各地区に在来種あり。
開田在来:郷土蕎麦もある長野県の在来種。
下栗在来:長野県の在来種。
戸隠在来:長野県の在来種で、苦みに特徴あり。
番所在来:長野県乗鞍高原番所地区で栽培されている。
福井在来:粘りの強さが特徴。大野在来と丸岡在来などがある。
横田在来:出雲そばで有名な島根県の在来種。玄丹蕎麦と呼ばれることも。
祖谷在来:徳島県に伝わる在来種。その昔、平家の落人が隠れた山にあったいう。
高知在来:秋型の在来種。
鹿屋在来:鹿児島県を中心とした九州で主に広がっている在来種。
対馬在来:日本蕎麦の祖先ともいわれる、対馬の在来種。渡来人が稲作文化などとともに持ち込んだといわれる。
参照:https://www.kaga-seifun.com/
2. 改良種
牡丹そば:紋別地方などの在来種から改良。
北早生そば:富良野地方の牡丹蕎麦から改良。収穫量が多く、早期収穫ができるため、北海道で生産されるソバの90%以上を占めている。
階上(はしかみ)早生:階上地方の在来種から。寒さに強いため、青森県や岩手県で主に栽培されている。
最上早生:山形で栽培されている、収穫量の多い品種。
常陸秋そば:金砂郷在来から改良。関東地方でよく栽培されている。
信濃一号:信濃と名が付くが、もとは福島在来種から。長野県の他、関東や関西でも栽培されている。
そば屋によっては、季節によってお蕎麦の産地が違うところもある。上記のような在来種や改良種を知っておくと、また一段とお蕎麦への理解が深まり、楽しめるかもしれない。