おそば屋に行った際、「蕎麦湯を飲むのを楽しみにしている」という人も多いかもしれない。同じ蕎麦湯でも、トロッと濃厚なものから、後口軽くサラリとしたものまで、そのお店ならではのものを楽しむことができる。しかし蕎麦湯は、”楽しむ”というだけでなく、”健康のためにも”ぜひとも飲んでいただきたいものなのである。
(1)蕎麦湯には『ビタミンB類』と『ルチン』が豊富に含まれる
おそばには、ビタミンB類やルチンといった栄養素が豊富に含まれている。特に『ルチン』はポリフェノールの一種として、最近注目を集めている栄養素。動脈硬化の予防をはじめとした、生活習慣病の予防、改善に効果的と言われている。
しかし、ビタミンB類もルチンも『水溶性』。茹でることで、お湯の中に溶け出てしまう。つまり、茹でたお蕎麦からは本来含まれていたビタミンB類やルチンの一部が失われているということになる。一方で、蕎麦湯にはおそばから溶け出したビタミンB類やルチンがたくさん含まれている。そのため、おそばと蕎麦湯を飲むことで、おそばが持つ栄養素を余すことなく摂取できる。
(2)蕎麦湯には『タンパク質』が含まれる
おそばのうまみ成分は、タンパク質。そして、おそばに含まれるタンパク質の半分ほどが、ビタミンB類やルチンと同じ水溶性であることがわかっている。一食をおそばで済ます時、タンパク質は貴重な栄養分。栄養バランスを整えるためにも、蕎麦湯を飲むことをおすすめする。
(3)蕎麦湯は身体を温める
冷たくてツルツルと食べられるせいろやざる蕎麦は、暑い夏やちょっと胃がもたれている時、二日酔いの時、急いでいる時などに大活躍。一方で、その冷たさゆえ、体を冷やしてしまう。「冷えは万病の元」と言われるように、体にとって望まれる状態ではない。最近では、冷えはガンの元とさえ言われているほど。そこで、冷えた体を温めるのに有用なのが、蕎麦湯。こうしたことを考えても、〆に蕎麦湯という習慣は、とても理にかなっている。
以上のように、蕎麦湯には栄養素が豊富に含まれ、体を温めるという実利がある。蕎麦湯を飲む習慣は、おそばの本場、信州で始まったとされている。これも食べ物を余すことなく大切にいただこうという日本人の心と、先人の知恵なのかもしれない。冷たいおそばをズズズとすすった後は、蕎麦湯でホッと一息つきたいものだ。