1.おそばと薬味の歴史は長い
そば屋でお蕎麦をいただく時、そのお店こだわりの『薬味』を楽しみにしている、というソバ好きも少なくないはずである。サービスの一環として薬味を置くそば屋もあるかもしれないが、おそらく、多くのそば屋は、「自店が提供するお蕎麦を、より美味しく食べていただける薬味」を吟味して提供している。だから、そば屋の薬味は、ともすれば『隠れた主役』とも言える。
お蕎麦に薬味を添えることは、江戸時代の書物『料理物語』にも記載があり、おそばには薬味を加えていただくのが習わしと言えるだろう。
そば屋で提供される薬味と言えば、ネギ、唐辛子、ワサビ、大根おろし、のりなどが一般的であろう。特に冷し蕎麦では、これらの薬味はお蕎麦と一緒についてくることが多い。
2.お蕎麦の薬味が持つ3つの役割
お蕎麦の薬味の役割については、様々な考えがあるが、主に3つある。『毒消し』、『食欲増進』、『栄養素の補給』、それぞれについて、深めていく。
(1) お蕎麦の薬味が持つ役割1『毒消し』
お蕎麦の薬味に限らず、元々薬味には『毒消し』の役割があった。例えば、お蕎麦の薬味の代表格、『ネギ』や『ワサビ』には、『アリルイソシアネート』という成分が含まれる。アリルイソシアネートは辛み成分だが、殺菌作用も持つ。最近では、抗腫瘍作用を示す実験データもあり、がん予防薬として期待がかかっている。
(2) お蕎麦の薬味が持つ役割2『食欲増進』
お蕎麦の薬味は『香り添え』と言われることもあるように、風味を引き立てて、食欲を増進させる。例えば、『ネギ』は血行促進作用を持ち、内臓の働きを良くするので、おそばもよく進む。また『大根おろし』は、独特の口当たりや辛味によって食欲を促すのに加え、ジアスターゼという消化酵素によって消化吸収もよくする。
一方で、『ワサビ』には食欲増進作用に加え、おそばに含まれるビタミンB2の働きを高める作用を持つ。ビタミンB2は糖質を代謝し、脂質を燃焼させるので、肥満を防ぎ、さらにはダイエット効果も期待できる。ダイエット効果という面では、『唐辛子』のカプサイシンも有名である。
つまり、これらおそばの薬味は、食欲を増進させつつ、肥満予防にも役立つすごい存在と言えよう。
(3) お蕎麦の薬味が持つ役割3『栄養素の補給』
おそばは炭水化物でありながら、カロリーが低く、低GI食品でもあるので、ダイエットにはもってこいの食品である。加えて、高血圧や脳卒中の予防効果があるとされる『ルチン』、肝臓の保護や美肌効果を持つ『ビタミンB1』といった栄養素が含まれるが、さすがにおソバだけで食事を済ませるとさすがに栄養が偏る。その栄養の偏りを補ってくれるのが、おそばの薬味である。
冷しそばに欠かせない『のり』は、おそばだけでは不足しがちなビタミンA、鉄分、カルシウム、ミネラル類をたくさんさん含んでいる。さらにすごいことは、お蕎麦と一緒に食べることで、のり単体で食べるよりも、健康の面での効果が増すということ。お蕎麦とのりを一緒にいただくことで、あらゆる生活習慣病のリスクとなる『血中コレステロール』を減らすことで動脈硬化を予防し、果ては、高血圧、脳血管疾患、心疾患などを防ぐ。またネギに含まれる『アリシン』は、血行促進作用のほか、おそばに多く含まれるビタミンB1の吸収を促すなど、これまた相乗効果を期待できる。
参照:http://smallnight1112.blog137.fc2.com/
3.薬味の違いを味わうのも、おそばの楽しみ
これまで、おそばの薬味として『ワサビ』や『大根おろし』などを紹介してきたが、これらの薬味も品種や季節によってその違いを楽しむことができる。例えば、長野県が産地として有名な『鼠大根』は、そばツユと相性がいいとして有名である。
また、冒頭に述べたようにそば屋によって提供される薬味が異なることや、そば屋チェーンでも店舗によって薬味が異なることが少なくない。こうした違いを味わうのも、おそばの楽しみのひとつと言えるだろう。
最近は、ゆず塩や抹茶塩といった、おそばと一緒に食べることの多い、てんぷらやかき揚げ用のアイテムが提供されていることも多い。こうした細かいところまで意識して、お蕎麦をいただくときの楽しみを増やしたい。