【栄養士解説】「実は蕎麦じゃなかった!」とならないための質の良い蕎麦の見極め方
外食産業でもスーパーでも、蕎麦のお値段は高いものから安いものまで幅広くあります。200円で食べられるお蕎麦屋さんもあれば、2000円ぐらいするお蕎麦屋さんもあり、どうしてこんなに価格が違うのか疑問に思ったことはありませんか。
お店の内装や小鉢、トッピングによる価格の違いもありますが、それ以外にも蕎麦そのものの質によって価格差が生じていることも多いのです。
本記事では、質の良い蕎麦を選ぶために、どのようなお蕎麦屋さんを選べばよいのか、スーパーで蕎麦を買うときにチェックしておきたいポイントなどを解説します。
その蕎麦、実は『灰色のうどん』かも…?
蕎麦を作るときに使われる主な材料は『蕎麦粉』『小麦粉』『食塩』です。蕎麦粉8割小麦粉2割の蕎麦を『二八蕎麦』と良い、蕎麦粉10割の蕎麦を『十割蕎麦』といいます。
蕎麦に含まれる小麦粉の主な役割はつなぎです。蕎麦粉は、小麦粉を少量入れなければうまくつながることができません。十割蕎麦の場合は、蕎麦粉を熱湯で溶いてつながるようにするのですが、高い技術が必要なため、職人の腕の見せ所になる位の難しさなのです。また、二八蕎麦の場合は小麦粉を入れることで蕎麦を作りやすくしているだけで、8割は蕎麦粉です。よって、決して悪質な作り方というわけではありません。
問題は、小麦粉をつなぎではなく、『カサ増しのため』に使っているケースです。外食産業や安いスーパーで売られている激安麺には、蕎麦粉が2割、小麦粉が8割、なんていうケースや蕎麦粉は1割も入れていない商品、というものもあります。外国産の小麦粉は、蕎麦粉よりも安く、原材料費を抑えるためにピッタリです。そのような蕎麦は、もはや蕎麦ではなく、『灰色のうどん』でしかありませんよね。最近流行っている200円程度で食べられる外食産業の多くは、このような蕎麦を使っていると考えて間違いないでしょう。
健康効果を期待するなら、小麦粉たっぷりの蕎麦はNG
ルチンやビタミン類、食物繊維を摂りたいといった目的や、GI値が低いということで主食を蕎麦にしたいという目的があるのなら、小麦粉たっぷりの蕎麦を食べてはいけません。一般的に紹介されている蕎麦の健康効果は、蕎麦粉に含まれる成分だからです。
小麦粉の割合が多すぎる蕎麦では、それらの健康効果を期待できませんので、蕎麦を食べる意味が半減してしまうでしょう。
格安蕎麦屋のグレーな真実と格安店の選び方
スーパーで販売される蕎麦については蕎麦粉の割合や表示が法律で義務付けられているのですが、外食産業にはそのような規定がありません。よって、小麦粉の割合が多く、ほぼうどんと同じ成分の蕎麦を提供しても、規制はされていないのです。
質の良い蕎麦の場合、通販サイトで値引きされているものであっても、一人前800円程度はするのですから、安い外食産業では小麦粉の多い安い蕎麦を使うしかないのでしょう。それは、もはやお蕎麦屋さんとは言いにくいですね。
しかし、格安のお蕎麦屋さんでも企業努力をして美味しく食べてもらう工夫をしているお蕎麦屋さんもあります。格安チェーンの1つである『ゆで太郎』では次のようなこだわりをもって店舗を運営しています。
お蕎麦は生き物です。「挽きたて」「打ちたて」「茹でたて」を属に三たてと言い、美味しいお蕎麦の条件とされています。それぞれに技術は要りますが、挽きたての蕎麦粉を目の前で打ち、目の前で茹で上げるのが一番美味しいお蕎麦です。ゆで太郎では、指定の製粉所で丁寧に挽いた蕎麦粉を、各店舗の製麺機で、毎日粉から製麺しています。
また、良い原材料を使用していなくても、作業工程で蕎麦を美味しく仕上げる工夫をすることができます。
例えば、生麺の蕎麦は1分、乾麺の蕎麦は3~4分茹でると美味しいというのが一般的なゆで時間です。スピード命の外食産業ではあらかじめ下茹でしたものや、工場で茹でられた蕎麦を提供前にサッと加熱するだけのお店もあります。そういうお店は麺の質も作業工程の質も良くないのです。麺を加熱する時間をしっかりとっているかは、良い格安店を選ぶ際のポイントとなります。
さらに、麺を打っているか店内を見渡してみるのも良いでしょう。先ほどあげた『ゆで太郎』のように、麺を自店舗で打っているお店は、茹でるだけのお店よりも、キッチンの面積が広くとられています。店内を見渡して、キッチン内に茹でる以外のスペースがあるかどうか確認することも、良いお店を判断するポイントの1つです。
外食産業では、一般的に小麦粉の割合が非常に多い蕎麦を使用していますが、価格競争をしながらも工夫しているお店もあります。今回は、お店を見分けるポイントを2つご紹介しましたが、色々なお店を食べ歩いて、良いお店を見極めることができるようになれば、あなたも蕎麦通の仲間入りですね。
スーパーで蕎麦を選ぶ際も注意が必要!
外食産業ではなく、家庭で蕎麦を食べたい場合も注意が必要です。ただし、スーパーで蕎麦を購入する際の注意点は、外食産業よりも分かりやすいです。
まず、確認すべきは原材料表示です。生麺の場合は蕎麦粉の割合が3割以上なければ『そば』と表記することを禁じています。乾麺の場合は3割未満であれば、蕎麦粉の割合を記載することが義務づけられているため、蕎麦粉を2割しか使っていないのであれば、『2割』という表記が必要なのです。
つまり、生麺は蕎麦粉が3割以上使用されていなければ蕎麦として販売することができないということです。また、乾麺の場合は表示を確認した際に蕎麦粉を3割以上使用しているかどうかをすぐに見分けることが可能なのです。
次に、蕎麦粉の割合が5割以上あるかどうかを見分ける方法をご紹介します。日本では原材料表示をする際に割合が多いものから順番に記載しなさいという決まりがありますので、「そば、小麦粉、塩」の順であれば蕎麦粉が5割以上「小麦粉、そば、塩」の順であれば蕎麦粉が5割に満たないとうことが分かります。
さらに蕎麦粉の割合が多い商品を選びたいのなら、メーカーに問い合わせをするのが良いでしょう。現在の日本の規定では、5割以上までしか見分けることができません。蕎麦粉の割合が多いことを売りにしている商品であれば、パッケージに記載されていることもあるでしょう。
蕎麦を食べているつもりが成分はうどんだった!とならないために
価格の安い蕎麦は小麦粉の割合が多くなっています。昨今は、どの業界も価格競争をしていますから、仕方のないことなのかもしれません。
しかし、蕎麦粉の割合が高い蕎麦は職人さんの人件費や材料費などのコストがかかるため、価格も高いのです。「蕎麦を安く食べられることもできるのに、お金をかけるのは損なのではないか?」と思うかもしれませんが、決してそんなことはないのです。
特に、近年注目されている蕎麦に含まれる健康に良い成分をとりたいのなら、蕎麦粉の割合が多い蕎麦を選ばなければなりません。コストを抑えたばかりに食べているものがうどんと同じようなものだった、小麦粉でできていた、となると本末転倒です。
正しい目を持って、質の高いお蕎麦屋さんや蕎麦麺を選べるようになりましょう。
(参考)
http://www.jfftc.org/rule_kiyaku/pdf_kiyaku_hyouji/019.pdf
http://www.caa.go.jp/foods/pdf/kijun_25_110930.pdf
http://www.yudetarou.com/aboutsoba/