旨い蕎麦屋の定義は人それぞれだが、品書きに『蕎麦がき』があるかどうかも、判断材料のひとつになる。
1.蕎麦がきとは
蕎麦がきとは、そば粉を練ったお餅のような食べ物。『かいもち』と呼ばれることもある。蕎麦がきの『がき』を漢字に直すと『掻き』となり、そば粉をお湯の中で”掻いて”作ることからそう呼ばれる。現代では『お蕎麦』といえば、細長く切って麺にしたものを指すが、以前は『蕎麦切り』と呼ばれた。
それは蕎麦がきが元々の広まっていたおそばの食べ方であったため、それを区別する目的で、麺状のものを『そば切り』というようになった。
蕎麦がきは、基本的にはそば粉100%で作る。新鮮なそば粉であるほど、風味が豊かでおいしいため、蕎麦がきを提供する蕎麦屋は、そば粉にこだわりがあるといえる。つまり、お蕎麦もおいしいというわけ。
2.蕎麦がきの歴史
蕎麦がきは、もっとも古いおそばの食べ方のひとつとされている。日本では縄文時代にはすでに蕎麦を使った料理が作られていたことがわかっているが、蕎麦がきとしては、遅くとも鎌倉時代には存在していたという。
江戸時代初期までは、お蕎麦は茹でるものではなく、そば粉を練って団子状にして、蒸して食べるものだった。その後、ソバ切りが広がっていくが、昭和の時代までは、ソバの産地を中心に、蕎麦がきがおやつの定番として食べられることも少なくなかった。
現在では、蕎麦がきは珍しいメニューになっているが、逆に取り扱っているそば屋は、そば粉に自信があるといえよう。
3.蕎麦がきの種類
蕎麦がきの作り方は、2種類ある。
3-1.椀がき
お椀にそば粉を入れて、熱湯を注いで、掻き混ぜて作るのが『椀がき』。手軽にできる反面、かき混ぜ方が不十分だと生煮えとなり、おいしくない。
3-2.鍋がき
お鍋にそば粉と水を入れ、よく混ぜ合わせる。その後、火を入れ滑らかになるまで混ぜ続ける。そのまま掬って、形を整えながらお皿に盛る。湯に浮かせる方法もあり。
4.蕎麦がきの食べ方
出来上がった蕎麦がきは、お醤油とわさびや、お塩で食べる。お餅の代わりに、あずきとあわせて『蕎麦がきぜんざい』としてもおいしい。また、蕎麦がきを油で揚げて、『揚げ出し蕎麦がき』として食べるのも◎。
まとめ
ソバ切りよりもはるかに長い歴史を持つ蕎麦がき。新鮮なそば粉100%でつくるほど、風味豊かな蕎麦がきが品書きにある蕎麦屋は、そば粉にこだわりがあるといえる。つまり、お蕎麦もおいしいだろう。
蕎麦掻きはそば切りを作るのに比べたら簡単で、家庭でもできるので、ソバ好きなら一度は試してみたい。