粋な大人は蕎麦屋で呑む。粋な大人の生き方なのか、はたまたただの酒好きのための考えられた言い訳なのか。とにかく、ソバ好きならば、かっこよく蕎麦屋でお酒を飲みたいもの。ソバ好きが知っておきたいお蕎麦屋でのお酒の、、、『蕎麦前』のたしなみ方をまとめてみた。
1.『蕎麦前』とは
蕎麦前とは、お蕎麦屋で飲むお酒のことを言う。蕎麦「前」とあるように、お蕎麦を食べる前にいただくのが普通。いわゆる『食前酒』のようなものだが、それを『食前酒』といわないところに、ソバ好きの粋を感じる。ちなみに、蕎麦前の習慣は、江戸から始まったといわれている。さすが、粋な江戸っ子は違いますぁ!
2.蕎麦前の由来
蕎麦前は、田舎に伝わる『蕎麦振舞い』が由来。蕎麦振舞いとは、その名のとおり「お蕎麦を振舞うこと」。新そばや年越しの時期などに、ソバの産地で行われている。最近では町おこしのために、イベントで蕎麦振舞いを行っている産地も。
伝統的な蕎麦振舞いには作法があり、まず『蕎麦前』を提供。続いて、お蕎麦を出して、『中割』といって再びお酒を出す。次に、おそば。最後に『箸洗い』といってお酒で締める。こうした一連の流れから、お蕎麦の前に提供されるお酒を『蕎麦前』と言うらしい。
3.蕎麦前で飲まれるお酒とは
蕎麦前で飲まれるお酒としては、日本酒が基本。寒い冬に、冷え切った体に染み渡る熱燗はたまらない。暑い夏の、冷酒は言わずもがな。もちろん、熱燗と冷酒は好みによって頼めばよし。最近では、ワインやビール、焼酎などお酒のラインナップが豊富なお蕎麦屋も増えてきているので、自分にとって最高の蕎麦前を見つける旅もおもしろいかもしれない。
4.蕎麦前と酒肴
蕎麦前の酒肴といえば『ぬき』。ぬきとは、種物メニューからお蕎麦を“抜いた”ものを言う。たとえば『天ぬき』というと、天ぷら蕎麦から、お蕎麦を抜いたもの、、、天ぷらとお汁だけが提供される。このほかの蕎麦屋の肴といえば、板わさ、玉子焼き、のり、油揚げなど。いずれも、種物メニューの材料を活かしたものばかり。板わさなど脂っけの少ないものから始め、油揚げと進んでいくとよい。
玉子焼きは、ソバ屋自慢のつゆを出汁に使っていることが多いので、そばつゆとの相性を確かめるポイントにもなる。
蕎麦屋の酒肴は、江戸時代からそれほど変わってないといわれているから、蕎麦前と酒肴をたしなめば、当時のソバ好き江戸っ子の気持ちもわかる!?
5.蕎麦前のたしなみ方
まずは、『蕎麦前』と酒肴を頼む。夏なら冷酒、冬なら熱燗か。酒肴は、脂っけの少ない板わさや玉子焼きから注文するのがいいだろう。蕎麦前で満足しきる前に、お蕎麦を注文。そして、おそばが到着したらお蕎麦に一点集中!お蕎麦が乾かないうちに、伸びないうちに、一気に食べきる。
最後に『そば湯』で、身も心も満たす。蕎麦湯には、肝臓の働きを活発にする『ルチン』という成分が豊富に含まれるので、体にもいい。
まとめ
蕎麦前は江戸時代から伝わる、ソバ好きの粋なお酒の呑み方。蕎麦前と一緒に頼む酒肴は、脂っけの少ないものから。そして、お蕎麦が来たら一点集中で味わう。最後に、蕎麦湯で締め。これぞ、粋な大人の蕎麦屋の楽しみ方。