お蕎麦豆知識

おそばのお品がき『もり』『ざる』『せいろ』の違いとは?

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蕎麦屋のお品がきを見て、気になること。『もり』『ざる』『せいろ』の違いである。お店によって、『もり』と『ざる』とが用意されているところもあれば、『ざる』と『せいろ』とが書かれているところもある。気になるけど、忙しそうに店内を動き回る店員さんに説明を求めるのも悪いし、聞くのもなんとなくかっこ悪いし・・・。なんとなく感覚で注文してきた人も、一度確認したい。

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参照:http://kasumigaurakotsu.com

1.江戸時代中期『もり』そばの誕生

江戸時代中期の元禄、時の将軍は徳川綱吉。当時、お椀に盛られていたそばきり。本来はつゆに浸していただくものだった。ところが、せっかちな江戸の男たちは、つゆに浸すことを面倒くさがって、おそばにつゆをぶっかけて食べ始めた。そして、『ぶっかけそば』が流行し出す。
すると、蕎麦屋としては従来のつゆに浸して食べる『そば切り』と、つゆをぶっかけて食べる『ぶっかけそば』を注文時に区別する必要が出てきた。そのため、従来のお蕎麦を『もり』と呼ぶようになった。つまり、『もり』そばは、『ぶっかけ』そばと区別するためにつくられた名称である。

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2.差別化で商売繁盛!『ざる』そばの誕生

『もり』そばが誕生した江戸時代中期、今度は竹ざるにお蕎麦を持って提供する蕎麦屋が出てきた。その蕎麦屋とは、現代の東京都江東区木場洲崎神社あたりに位置する『伊勢屋』である。なぜ、お蕎麦を竹ざるに盛ったのかは定かではないが、おそらく他店との差別化を図ったのものと考えられる。狙いは見事的中し、『伊勢屋』の『ざる』そばは、江戸中で評判になった。すると、他の蕎麦屋も追随して、『ざる』を提供するようになったとされる。これが、『ざる』そばの誕生秘話。

当時は、単に器を変えただけでなく、つゆも『もり』とは一線を画していたらしい。ざるそば用のつゆには、もりそば用のつゆと違い、みりんが加えられていた。現代における本みりんがそうであるように、江戸当時もみりんは高級品。そんな高級品をざるつゆに使うなんて・・・つまり、「ざるそばは、高級品ですよ!」というのが、『ざる』そばを提供する江戸の蕎麦屋の“ウリ”だったのである。
ただし、現代はつゆの違いはなくなり、おそばに海苔がかけられているものが『ざる』、海苔がかかっていないものが『もり』として区別されていることが多い。

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3.『せいろ』の誕生、二つのターニングポイント

『せいろ』そばは、二つのターニングポイントによって誕生したと考えられる。二つのターニングポイントについて解説する。

(1)平椀から『蒸籠』へ
お蕎麦が江戸で食べられるようになった当初、お蕎麦は『平椀』という浅く、平たいお皿に盛って提供されていたと考えられている。そして『もり』そばが誕生したころ、おそばを平椀から蒸籠に盛り付けるのが流行し出す。蒸籠とは、蒸し物料理を使う調理器具のひとつ。というのも、江戸時代初期では、おそばは蒸して食べられていた。そのため、蒸したおそばをそのまま蒸籠に盛るというのは、理にかなっていると言える。
おそばが、お皿から蒸籠に盛られるようになった、これが最初のターニングポイントである。

(2)『蒸籠』から『せいろ』へ
二つ目のターニングポイントは江戸末期の天保時代。今から200年近く前のこと。江戸の蕎麦屋たちは、おそばの値上げをお願いした。しかし、『二八』というイメージもあってか、値上げはかなわず・・・一方で、“ある得策”が許された。
その得策とは、『上げ底』。蒸籠を上げ底にし、そこにお蕎麦を盛ることが許可されたのである。上げ底にして、盛るお蕎麦の量を減らして実質値下げというわけ。実質値下げって、まるでスマホ商戦のようだ・・・話を元に戻す。現代の『せいろ』を思い出してもらうとわかるが、枠と竹の底はほぼ同じ高さである。元々の蒸し器としての蒸籠の役割を考えると、使いにくいことは想像に難くない。つまり、天保時代に現代の“そば専用の蒸籠”が誕生したのである。

“上げ底蒸籠”に山盛りに盛られたお蕎麦は、その名も『山盛りそば』と呼ばれることになる。のちにそれが『盛り蒸籠』となり、『蒸籠』そして、今の『せいろ』となった。

4.そば屋で『もり』か『ざる』、もしくは『せいろ』か『ざる』で迷った時は?

現代のそば屋で『もり』を食べるか『ざる』を食べるか、もしくは『せいろ』を食べるか『ざる』を食べるかで迷った時は、次のことを考えて選ぶとよい。

現代における『もり』や『せいろ』と『ざる』との違いは、「海苔があるかないか」。よって、海苔があることのメリットとデメリットを考えると、その日に食べるお蕎麦を決めることができる。

(1) おそばに海苔があるメリット
おそばに海苔があるメリットは、「お蕎麦だけでは不足しがちな栄養素が取れること」にある。お蕎麦はカロリーが低く、ルチンやビタミンB群などが豊富に含まれる、『健康&ダイエット食』。一方で、海苔には、タンパク質のほか、ビタミンAやビタミンC、鉄分などが豊富に含まれている。お蕎麦と海苔を併せていただくことで、様々な栄養素をバランスよく摂取できる。
また、海苔がそばつゆを吸収することによって、より深い味わいを楽しむことも可能。しっかり栄養を摂りたい場合や、濃いめの味を楽しみたい場合は、海苔がのった『ざる』がおすすめ。

(2)おそばに海苔があるデメリット
海苔そのものに香りがあるため、おそば本来の香りを楽しみにくい。また、歯ごたえにも影響を及ぼす。初めて行く蕎麦屋で、まずはお蕎麦そのものを楽しみたい、という場合には海苔のない『もり』がおすすめ。

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5.『もり』『ざる』『せいろ』の違いまとめ

『もり』『ざる』『せいろ』は江戸時代にそれぞれ誕生したと考えられる。ただ、現代では明確な区別はなくなっており、提供する蕎麦屋が『もり』と言えば『もり』、『ざる』と言えば『ざる』、『せいろ』と言えば『せいろ』というのが答えである。ただし、『もり』と『せいろ』は単に器の違いであるため、この組み合わせ提供している蕎麦屋はほぼない。
蕎麦屋によっては、『もり』『ざる』『せいろ』の考え方は様々であるため、タイミングを見て店員に聞いてみるのもいいだろう。

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