心地よい風が吹き始めた秋晴れに。。。蕎麦懐石で有名なお店、蕎麦恵土へ。
店構えから、しゃれており、そばの香りも楽しめる。旧友とのたまの日帰り旅行時や特別な時に行くべきお店
1.神奈川県三浦郡葉山町について
うだるような暑さもようやくひと段落して、心地よい風が吹き始めた秋晴れの日。
旧友と会うことになっていた私は、至極のソバ屋を探していた。気候もいい。せっかくなら、都会の喧騒から脱出して、時がゆっくりと流れるような処で、お蕎麦をいただきたい。
ということで、やってきたのは神奈川県三浦郡葉山町。『三浦郡』と言っても、三浦郡には葉山町しかない。人口3万人ちょっとの葉山町は、三浦半島の西北部にある。葉山町内には、美しい山々や川があり、その川は相模湾に注いでいる。こうした豊かな自然を持つ葉山の地は、かつて源頼朝が鎌倉幕府を立ち上げて以降、将軍はもとより、各要人の保養地となったとか。
このような関東屈指の豊かな自然に魅せられた人。それが、今回私が訪れたソバ屋の主人、恵土(えど)靖さん。『蕎麦恵土』で、仕込から調理までを一人で行っているらしい。
2.『蕎麦恵土』について
『蕎麦恵土』の主人、恵土靖さんが飲食店を経営していた若かりし頃、次はソバ屋の出店を考えた。そこで出会ったのが東京の立川市にある蕎麦懐石『無庵』。
『無庵』で約3年にわたる修行を経て、平成18年に『蕎麦恵土』を独立開業。主人が、『無庵』に惹かれたのは、おそばの味だけではない。空間にも魅せられたのだとか。
蕎麦懐石 無庵の店構え。
おそばと空間を大切にする主人の思いは、『蕎麦恵土』にまさに現れている。
蕎麦懐石 無庵の店内。
JR伊豆駅からバスでおよそ10分。『元町』バス停を降りて、歩いて5分ほどのところに『蕎麦恵土』がある。昭和初期に造られた古民家を改装した『蕎麦恵土』は、懐石の名にふさわしい重厚で、それでいて日本人の心の中をくすぐる優しい佇まい。
建物は木々に囲まれ、相模湾から吹く海風が香り、訪れただけでも、心がスーっと洗われるのがわかる。交通の便や人口の多さという意味では、決して好立地ではない。
しかし、『無庵』での修業を通して、『食材』こそ料理の要であると気づいた主人は、豊かな自然に囲まれた葉山のその地を『蕎麦恵土』の出店場所に選んだらしい。料理にはもちろん、三浦半島の食材がふんだんに使われている。
店内は、古民家をそのままに、畳の上にテーブルを置いたスタイル。
柱や梁、床の間、そして畳。いずれも歴史と風情を感じさせ、『空間』をも大切にする主人のこだわりが見える。テーブルが4卓に、座敷が1卓の全部で20席以下。
落ち着いておそばをいただけそう。実際に、夜の営業では落ち着いた空間に配慮し、小学生未満は入店お断りと言うから、かなりのこだわりようである。
3.『蕎麦恵土』のおそばは
『蕎麦恵土』では、福井県と茨城県から有機栽培の玄蕎麦を仕入れているとの事。その玄蕎麦を2種類の方法で挽く。
ひとつが、電動石臼挽き。
電動で粗挽きにされたお蕎麦は、のど越しがよく、味わいとのバランスが追求されている。つなぎは、1割。
もうひとつは、手臼による手挽きのお蕎麦。
つなぎはわずか、0.5割らしい。手挽きならではの深い味わいを楽しめる。
私は旧友と、手書きのメニューを眺めた。そして『鴨せいろ』を注文。落ち着いた空間で、旧友と語らいながらゆっくりとお蕎麦を待つことにした。
たまには、こうしてじっくりおそばを待つのもいい。15分ほどしたところで、料理が到着。
主役のお蕎麦は透明感があって、蕎麦殻が見える。器やせいろはもちろんのこと、お盆やコースターまでとてもしゃれていて、贅沢な気分にさせてくれる。
旧友との語らいもしばし休憩して、瑞々しく輝くおそばをいただく。粗挽きならではの香りと、歯触り。長く待っていたこともあり、ツルツルと喉に吸い込まれていく。蕎麦麺は粘り気があり、コシもすばらしい。本物のおそばといった感じ。これはぜひ、全国独りそばふりーくのみんなにも食べてもらいたい。ただし、『蕎麦恵土』は独りよりも、大切な人と来るのがおすすめ。
ちなみに、おそばに豊富に含まれるとされる『ルチン』。動脈硬化を予防するとして、オヤジには嬉しい成分だが、このルチンの効果を充分に期待できるのは、二八そばまでと言われている。
二八そば以上につなぎが多くなると、ルチンの健康への効果も薄れてくるのだとか。『蕎麦恵土』のおそばは、そば殻もたっぷりで、栄養価も高そう。
4.『蕎麦恵土』の個人的なまとめ
『蕎麦恵土』は、蕎麦懐石で有名なお店。交通の便は消して良くない場所にありながら、週末は予約だけで満席になってしまうほどの人気店。
店構えはもちろんのこと、内装、食器まで主人のこだわりが見え、しゃれている。食べログでも『3.59』と文句なしの高評価だが、そば通ほど『4.0』以上の高評価を与えている印象。
お蕎麦は電動石臼で挽いたものと、手挽きのものとが選べる。いずれも、おそばの香りを楽しめ、のど越しがよい。
ランチでもなかなかのお値段がするが、それでも「安い!?」と思わせるくらいのおそばと、落ち着きのある空間が提供されている。
個人的に『蕎麦恵土』は、オヤジの独りそばというよりは、旧友とのたまの日帰り旅行時や特別な時に行くべきお店。